地域の観光政策、人材

日本と海外の比較

「日本版DMO」運営の事例など海外のDMO先進地が取り上げられることがあります

私の経験から「日本版DMO」と海外の「DMO」の異なる点を考えてみたいと思います。海外事例を参考にする際や比較する場合の注意点は、世界的な成功例は規模、産業としての位置づけが異なるので、事例を参考にする場合そのことを考慮する必要があります。また、日本と欧米では観光に対する政策や歴史や概念、税、行政の仕組みが異なります。特にスイスでは「ブルガゲマインデ(地域経営組織)」など、地域社会で稼ぐ仕組みが既に社会基盤として出来上がっています。海外の観光事例はとても参考になるのですが、事例よりも地域の事情に合わせた、地域ならではの「DMO運営」の方向性を地域でしっかりと決めて運営を考えることに時間を費やすほうが建設的とわたしは考えます。。

DMO人材

前置きが長くなりましたが、今回はDMOに必要な人材について少し触れてみたいと思います。その点では、海外の地域づくりの仕組みというか気質も含め参考になります。皆様もご存じの通り「日本版DMO」の要件のなかに観光の専門分野に精通、マーケテイング分析、合意形成能力など・・いわゆる観光のプロとしての資質がいくつか求められています、もちろんそれだけのスキルを持った人材が地域にいるか集まればいいのですが、なかなか難しいのが現況です。

日本には「よそ者・若者・・」的な人が地域を変えるみたいな風潮がありますが、確かにそれも一理あるとは思いますが、DMOの人材はどれだけ「地域愛」を持った人であるか、地域の為に活動できる高い意識を持っているか「地域でよしやってみよう」という人材にまかせることが重要であるでしょう。それは、DMOは観光を手段とるする、地域づくりがゴールだからです。

人材教育

人材についてはスイスに見られる地域運営組織「ブルーガゲマインデ」は、常に自分達で村づくり(街づくり)について活発な議論が行われ、人材についても、基本的に地域のことは地域で解決していこうといスタンスを概念として持っています。地域人材についても同じです。しかし日本の場合は、人材獲得はまず「地域外から・・」というパターンになることが大半です。組織立ち上げに対してリミットがあり、事実上地域内からの専門的な観光スキルを持つマネージャー人材獲得は困難だとしても、数年で育成し、地域外からの一時的な採用の場合、サポートとしての役割を明確にし地域の”事情教育”は入社前に必要であると考えま,す。なぜなら、地域の事情を知らずに地域のかじ取りをする目的であるDMOの運営に携わること自体に無理があります。観光のスキル以上に地域事情を知ることが重要です。そして把握までに時間もかかることも理由にあげられます。さらに観光のスキルは研修や教育、本人の努力である程度解決しますが、地域の事情は把握するのに教本はありません地域で信頼を築くことが必要です。また「地域愛」についても研修ではあくまで概念だけで”ハート”が必要です。いくら語学が堪能で海外の観光マネージャーを経験していても、既に地域に暮らしている人のほうが地域(地域資源)のことはよく知っています。その話をすると必ず「地域の人は外を知らない、地域外の人のほうがいいところを発見できる」という答えが返ってきます。

     あるオーストリアの山岳ガイドの言葉です。

 ―「地域にとって、私の暮らす村をどのようにしたらよくなると考える人達、真剣に自分達の問題として取り組む人達が育っていない限り、この村は維持できない」

”地域づくりは、他人事でない、行動力と地域の人材教育が大事である”ということを教えていただいたのだと思いました。

彼は、地域愛と山岳のガイドスキルを学び小さな村を世界的な観光地として押し上げました。

まとめ

最初から地域外から人を連れてきて、DMOを運営しようと考える、他力本願的な思考ではなく「地域のことは地域で解決していく」というスタンスが、今後の地域にとって重要であると強く感じます。現実的には小さな日本の地域DMO運営は、地域外の専門的スキルと地域内のスタッフでメンバーで構成していくこともあると思います。一時はプロパー人材に指導してもらっても、最終的には地域で人材力をつけていくことが政策に盛り込まれていくことが大切です。

出来るだけ、住民が観光街づくりに関心を持ち、そして参加するよう導く人材が地域で信頼を獲得しDMO運営をマネージメント、それに行政が支援すれば、観光地域づくりは、どんなに小さな地域でも成功できるでしょう。 2021年7月21日寄稿

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