平成27年11月より観光庁が導入したDMO登録制度(候補法人)。DMOは観光立国スイスをはじめ欧米など世界各地で導入されている制度で地域が主体となり観光地運営を行う特徴があります。「日本版DMO」の登録数は令和2年3月1日現在「地域連携DMO79団体、地域DMO7団体の計162団体」なかにはこれから観光で地域を活性化させる取り組みとして観光を選択した小さな地域も見られます。そして今後も小さな地域の観光協会等が「DMO」を目指すとみられます。

DMOの使命は観光地域運営です。その代表的な業務に地域の観光データ収集があります。公益的な役割があるため自治体などから委託業務も含め運営財源が拠出されることがほとんどです。またDMO運営は「観光のプロ=専門的な観光のスキル、総合マネージメント、市場予測やデータ分析能力」が要件に求められます。専門的なスキルを持っている人材を雇えばコストに反映します。しか地域の現状は人口減が著しいなか現実問題として財源を増やすことは困難です。仮に一時的に予算処置を行い財源を増やすことはできても持続的な運営を図ることにはなつながりません。DMOは行政からの財源が運営の大半を占める団体もおおく組織運営で比率の高い人件費を長期的に確保できることが安定的な運営を図ることになります。政策のなかで新たなにDMOを設立する場合、地域でよく議論を行いDMOの存在意義を明確にし、「地域にとってDMOの導入が有効なのか」「今後の観光振興にとって必要な手段であるか?」その実現のために「専門人材の起用をし地域にとって人的投資が必要である」という執行部の強い意思決定が必要です。

次にDMOの「客観的データからの分析」です、「観光データをどのように活用して施策に反映させるのか?」この問題は日本の観光政策において大きな課題です。全ての地域ではないのですがこれまで日本は欧米諸国のように観光を基幹産業として捉えてきた地域は少なく、観光は地域の行事の支援など街づくり的概念が浸透しています、観光のイメージは産業思考ではなく情緒的な議論で合意形成を図ってきた風潮があります。その他これまで統一化されていないなかでの観光データの蓄積である地域もおおく、データ自体の精度にも課題があります。

日本版DMOの持続的な運営は、「3年間程度の運営資金のメドがたっていること」、「住民が観光を産業として捉える意識」、「議論できる観光データ」など、最低でももこの3つが準備できてからスタートすることが望ましいでしょう。その3年間にデータ整備や地域での関係性を強くして基盤を整えるのが現実的です。

このDMOの登録制度を機に、地域でのデータ取得や管理やを一元化を図り、観光振興のゴールを明確に定める、多様な関係者での合意形成を図る仕組みを変えるチャンスとして捉えるのです。

最後に地域で本格的なDMO運営を図るには、地域事情を踏まえた地域内でのまとめ役的な能力を持つ人材が必要です。地域の人材は、観光の専門人材と同じくらい重要です。地域内でその人材を獲得できるかが安定的な運営を左右します。その理由は、仮に新たに外部から高い観光のスキルを持った人材を雇っても地域事情を理解するには時間がかかります、また市場主義のみで施策を進めことは地域の事業者との軋轢を生み、信頼関係が築けず真の合意形成を図ることは困難です。置き換えると、地域での「インナーマネージメント」は地域の人解決、リーダシップをとる、観光の専門家は観光のスキルでリーダーシップをとる、それぞれ地域と専門家が活躍できる環境づくりを行政が導くことが必要です。2019年寄稿

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