旅の視点 開発、資源、~ アルリカ、カメルーンの森

 キーワード:観光政策 環境 民族、持続可能、開発、資源 アフリカ大陸の中西部に位置するギニア湾(大西洋)に面するカメルーン共和国は、日本の面積より少し大きい国土に森の聖者ピグミー族に代表される250以上の部族で構成されている。標高4000m級の火山群、北部にはサバンナ地帯が広がる。熱帯雨林、火山、海、河、サバンナ等、あらゆる地球の姿が凝縮されている、地球の縮図と表現される理由は、壮大な自然環境にある。 私はピグミー族に出会う為に大西洋岸の港町クリビへ向った。そしてマングローブが生い茂る、赤茶けたロベ川を小型ボートでひたすら進む。いつの間にかジャングルの世界へと足を踏み入れていた。森に入ると日差しが遮られ昼でも暗い。まるで、時間に追われている私達の時計という感覚を狂わすような地球の生命、深く濃い酸素を作りだす森だけの時間的空間に入り込んでいる。聞こえるのはサルの鳴き声と時折ジャングルから漏れてくる『ヒューヒュー』という音のみである。-案内人によると『あれは、ピグミーの人達が狩リの時に獲物を追い込む声だ』と教えてくれた。やがて、ボートは岸に着いた。ジャングルを30分ほど歩くとピグミーの部落に着いた。早速、村の世話役にピグミー族は?と聞いた。『今は、いない』何故だ?だって、『昼間は、狩りだから、夕暮れになれば帰ってくる』 ピグミーは、カメルーン、中央アフリカ・コンゴに分布する森の民で森に適応した小柄(身長150センチ程度)な体型が特長でカメルーンにはピグミー族のバカー系の人種が暮らしている。オリジナルのピグミー族は1980年代に絶滅している。現在は、他の部族との混血が進み定住生活が多い。かつて、定住することなく狩猟で生計を立てていたカメルーン・ピグミーはそのほとんどが定住を余儀なくされ、混血し、森に適応した小柄な体を奪い、かつてより背が約10センチも伸び、森に戻るには難しい体となってしまった。ピグミー族をはじめ狩猟民族ほど自然と共存した人間はいない。真の意味で生きる為に自然的手法を選択した、狩猟という行為は定住を求めないから大地にダメージ(自然破壊)を与えない。人間が生きるために掘り起こした大地に回復の時間を与えるのだ。狩りという仕事は必要な分だけ食料を確保すると終わる。そのライフスタイルは実にシンプルだ。人口知能等、人間の適応能力を超えた世の中、私達はもう一度、彼らのライフスタイルから学び地球が向かう未来に対して直視するべきだと感じる。地球温暖化や公害問題、何か地球全体の問題解決へのヒントがあるとも感じる。 しかし、彼らにも消費文明が訪れ、石油産出国であるカメルーンは資源争奪戦の場として開発の波が加速している。世界中で起こる”開発・進化”という聞こえの良い森林伐採は、彼らの居場所と森の精霊文化を失しうきっかけを作っている。世界中で今もどこかの狩猟民族は絶滅し、森の民から街の会社員へと転職を与儀されない状況である。自然志向の生き方で営む民族が減るだけ、人間は自然に対しての思いりや思考無くなり、スローガンだけが語られていくように感じる。今日、伝統的な昔の狩猟を営むピグミーの人々に出会う為には3週間程のジャングルへの旅になる。翌年は、さらに奥地に行かなければ森の民に出会うことはできないかもしれない。彼らが先祖から受け継いだライフスタイルを守れるかは、自然の宣教師であるピグミーの人達ではなく、資源大量消費国である私達が左右しているから不思議だ。 今日、地球はボーダレスな時代でなんでも情報が得られるような感覚に陥っている。しかし、地球の本質を伝える情報発信は膨大な情報の中に埋もれ見つけ出すことは難しい。ピグミー族のような素晴らしい人達に身近で会える地球に住みたいと思う、そして、原始を感じる旅に出会いたい。カメルーンからの学びは、サスティナブルな社会を築くことがいかに難しかを教えてくれる旅であった。環境と観光のバランスを超えない、地域優先の観光開発がサスティナブルツーリズムの鍵でもある。
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